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2019/07/04

短歌人会員2 その3 2019/6

 雨。
 南九州では大変な雨で、娘は、住んでいる借家から婿さんの実家へ家族ごと避難。
 伊豆もだいぶ降った。
 ほとんどが山で、そのまま海へ繋がっている伊豆半島は、時に崖崩れもある。
 今朝、ハザードマップを初めて確認する。
 今まで、見たことがなかった。
 山上でも、ここは尾根の上なのでやや平坦。
 警戒区域には入っていない。


 七人の作者の歌、七首を。

 限度額認定証をとるたびに窓口で泣く人おもいだす
           真中 北辰

 一定以上に医療費が掛らないよう、月限度額を抑える公的仕組み。社会福祉協議会が窓口になっている。何か認可が降りなかった人かもしれない。

 月曜の物干し竿に赤色と水色 二枚のユニフォームならぶ
           清郷はしる

 清々しい、色彩も映える一首。子どもらが週末の練習か試合に着たユニフォーム。「物干し竿」で、干した光景も浮かぶ。

 星のひかり零れる深夜願わくばあなたも孤独でありますように
           佐藤 佳子

 孤独感さえ分かち合いたいという願い。切ない気持ちが伝わってくる。初句二句は、何とか演歌調を離れたい。

 新しき姓の漢字を嬉々と書き名の<龍>の字のあやしき八歳
           瑞坂  菜

 母の新しい姓、すなわち自分の新しい姓を、小二の子が嬉々として書いている。名前の龍は、さすがに難しい。

 ナースコースの「イッツ・ア・スモールワールド」が一日中鳴り響く病棟
           古賀たかえ

 大変な病棟である。連作から、作者が入院していることが分かる。看護師にとって、戦場のようなものかもしれない。

 終電を逃したわれは品川の牛丼屋から出るに出られぬ
           いなだ豆乃助

 大変。東口近くに24時間営業の吉野家がある。五時間ほどを、ビールでも飲みながら過ごすしかない。牛丼屋のハシゴという手もある。

 「モモ」と呼べばまぶしい顔でふりかえる柴犬のモモは肉まんがすき
           佐藤ゆうこ

 まぶしい顔、に相互の愛情がよく表れている。肉まんが効いている。柴犬はかわいい。

2019/07/03

短歌人会員2 その2 2019/6

 曇り。
 暑い。
 靄はやや薄く、対岸の熱海、湯河原、真鶴が、山水画のように輪郭だけ見える。
 大坂さんはウインブルドン一回戦で負けたけれど、男子でも、ズべレフ、チチパス、ティエムが負けた。
 勝負は厳しい。
 負けた方はこんな言い方になるけれど、勝った方にしたら、トップ10を破る金星を挙げた訳で、今までの苦労修練が実を結んだ結果だ。
 嬉しいこと。
 勝つことも、負けることも意義深い。
 

 五人の作者の歌、五首を。

 退き際の美学を示す平成の天皇イチローそして嵐と
           大住 迪子

 天皇とイチローと嵐を、平等に並べる大胆さに驚かされる。退き際の美学、は流石にありきたり。ここは、上手く平俗から脱したい。

 ヲホホホホヲホホホホホホ切なさの溢れでてゐる猿の呼び声
           齋藤 壽子

 山中か、動物園か。いろんな理由の声の中で、呼び声と断定している作者は、猿の生活をよく知っている。

 花粉症の経験まつたく無いと言ふ仕合せな人よわれは立ち去る
           渡部亜矢子

 作者は怒っている。自分の花粉症に対し、相手に対し。苦しんでいる相手に配慮もなく自分の仕合せを喜ぶ人。

 眼帯に視野閉ぢられし一日は小鳥の声の常より多し
           佐々木順子

 人間はある能力が阻害される時、他の能力が補償する。サヴァン症候群などは、その例と考えられる。人体は凄い。

 展示され悔しい感じに語られる鍋島藩のアームストロング砲
           山本もとひ

 大村益次郎が鍋島藩からアームストロング砲を借りて、上野に篭る彰義隊を砲撃駆逐したという史実がある。それが、悔しいの元か。 

2019/07/02

短歌人会員2 その1 2019/6

 雨が止んで、暑い。
 夏の暑さ。
 風がない。
 ウグイスが鳴き始める。
 雨季の間、抑えていた力を解放しているのだろう。
 鳶のピーヒョロヒョロという声も聞こえる。


 五人の作者の歌、五首を。

 母語として英語を話す義妹(いもうと)の早口聴きおり法事の席に
           笠原真由美

 英語圏出身の義妹が早口で話す。異文化の法事で分からないことも多いはず。聴く、とあるから作者も英語が堪能なのだろう。

 中断のできない恋にはく靴は赤くなければなければならぬ
           千葉みずほ

 なければのリフレインに作者の執念が篭る。上の句は、ちょっと不思議で読者を説得する力がある。

 私には弱みがあって嘘をつくことがあり日々伸びている茎
           相田 奈緒

 告白のような弁解のような開示のような上の句。惹きつけられる。唐突に下の句に無関係が来る。暗喩だとしても、無骨。

 喪服、という付箋をドアに貼ったまま妻が中央林間に帰る
           山本まとも

 五通りほどの解釈がすぐ浮かぶ。新劇の舞台なら分かる。そう思えば面白いけれど、読者が分かることがそもそも前提にされていないのかもしれない。

 出張のみやげにむすこが買いくれし稲庭うどんを昼餉に茹でる
           小林 恵子

 親思いの息子である。世が世ならその饂飩は殿様だけの門外不出の食材だった。作者はそれを茹でている。

2019/07/02

短歌人同人1 その8 2019/5

 風はひと段落。
 雨も多分。
 全天、曇っているけれど、やや白い。
 トンボがたくさん飛んでいる。
 野鳥が鳴いている。
 ヒヨドリが一羽、飛来してベランダの手すりに留まる。
 ああ、あと何日雨が続くのだろう。
 沖縄は梅雨が明けたという。


 九人の作者の歌、十首を。

 監督票備考の欄にペンをもて「鼻血」と記す玉葱匂う
           藤井 良幸

 試験の監督をしていて鼻血を出した。備考欄に主語なく鼻血だから、作者自身。匂う、は悪いものではない。ほう玉葱か、と思わせる。

 老いを深め今を受け入れられぬらし我が父なれど疎ましくあり
           柊 明日香

 厳しい歌。父の方へ感情移入すると、やるせなくなる。娘から、斯様に思われる日が来るのかと、自分に置き換えてみる。

 権威臭を纏いきしゆえ離れたりかの批評家や歌人いくたり
           西勝 洋一

 権威臭を持つほどの批評家や歌人と交流があったことが分かる。そんな大物と、そもそも大概の人は付き合いがない。幸い。

 パワハラの調査終わらず家路なる途中に光る氷柱(つらら)幾条
           長谷川富市

 教育機関の学長なれば、調査も命じなければいけない。研究者である作者が、経営責任も監督責任も負う。氷柱が光る。

     新宿ゴールデン街
 仙波さんの行きつけのバー「のんちゃん」に二十六年ぶりに行きたり
           宇田川寛之

 仙波龍英は、ランボーのように酔いどれだった、たぶん。二十六年間、バーが続いていたことがすごい。

 歌枕ならねどイトーヨーカドー思いて指を折り歌つくる
           藤原龍一郎

 イトーヨーカドーは八音。どう定型に嵌めるか。作者は二句と三句へ句跨りにして上手く収める。指が要る。

 「7号車ご案内終了です 田端」と田端に行くたび言いふらされる
           斉藤 斎藤

 車椅子の乗降などで聞く。が、「終了です」まで。田端駅だったので思わず言ったのかもしれない。間違い切手にプレミアが付くようなもの。

 足指の関節の軟骨擦り減りてどにもならぬと若き医師いふ
           小池  光

 結社誌は、会員の具合や動静を自然に窺い知る場になる。これを読むまで小池さんがこんなに大変だとは全く知らなかった。

 一歩一歩奥歯食ひしばり歩くわれをあるきスマホの若者追ひ抜く
           同

 人の不幸は外からでは、なかなか分からない。ギックリ腰などもこの類に入る。若者が悪い訳ではないが、コントラストが光る。

 春の夜の電信柱あるときは千手観音像と見まがふ
           紺野 裕子

 見紛う人がすごい。電信柱が千手観音。想像力が追いつかない。あるときは、は二様に取れるが気にならない。私は、在る。

2019/07/01

短歌人同人1 その7 2019/5

 雨。
 今日も、海と陸と空の境目は見えない。
 雨だれの音だけ。
 昨日と違うのは、風。
 今朝から無風。
 先祖のことが気になる。
 竪穴式住居の先祖。
 あの家で、どう雨を凌いでいたのか。
 創意工夫に溢れていたに違いないが。


 六人の作者の歌、、六首を。

 カップ麺すする私を我が見る昼のひとりは夜よりかなし
           会田美奈子

 夜の一人は哀しいけれど昼はもっと哀しい、という歌。カップ麺が効いている。

 つひに牛に生れ変はりて夢のなかモーニング・セット食べてゐるなり
           村田 耕司

 牛になるぞ、と親に注意されたとき、牛に蔑視があった気はしない。牛は不思議な生き物で、作者は遂に牛になった。

 小人は十円大人は十五円と番台にあり「コビトつて誰?」
           榊原 敦子

 戦後すぐの銭湯だろう。小人はしょうにん。小人(こびと)目付、小人(しょうじん)閑居して、などと色々化ける。

 美しく甘きものには事欠かぬデパ地下は女同士ゆくもの
           大越  泉

 この作者にして珍しい直球。当たり前と言えば当たり前かもしれないけれど、美しく、に男をたじたじとさせる力がある。

 行行子(よしきり)のこゑを聞いたよ きみの不在から幾年経ちぬ
           山下冨士穂

 三句脱落は高瀬一誌譲りの秘技なので、この作者以外は真似してはいけない。連作から矢古野春子さんへの挽歌だとわかる。

 市役所の確定申告会場にカップルいちやつくさまを見てゐつ
           藤田 初枝

 いちゃつく、という俗語でカップルを貶めているけれど、見る方の目による。結句で落ち着かせている。うまい。

2019/06/30

短歌人同人1 その6 2019/5

 雨。
 今日も、海と陸と空の境目が見えず。
 靄が深い。
 朝方、突風が吹いて周りの森の木々が揺れ動く。
 今も風が強い。
 野鳥はきっと、目と耳を塞いで、じっとしている。
 家の中は平和。

 かつて先祖は竪穴式住居に居た。
 どんな気持ちで雨風を受けていたのだろう。
 
 今、屋根があり壁があり、家がありありがたい。
 仕事で今、広島にいる妻から電話。
 昨晩、仕事後の打ち上げで遅くなり、今朝は頭痛がするという。
 遠隔でヒーリングする。
 「多分、これで治るよ。」
 と言うと、
 「あ、だいぶ良くなった!」
 と言う。
 よかった。


 六人の作者の歌、七首を。

 無人駅となりしホームのベンチには座布団ふたつならべられゐて
           藤本喜久恵

 鉄道会社が置くとは考えられない。管理を任されている人が置いたのかもしれない。或いは無償の行いか。人の気持ちがそこにある。

 桃色をえらんで食べるひなあられ幼子はわが母の顔知らず
           木曽 陽子

 わが母は孫の顔知らず、と逆も真。血の(自意識の)記憶は無邪気の中に消えてゆく。悲しくもある。

 老ふたり冬の夕餉に鱈汁の粗(あら)も顎門(あぎと)もいやしく舐(ねぶ)る
           石川 良一

 いやしく舐る、という自虐が、写実の誇りを持って表される。自分は老いさらばえ、妻は日に日に衰えて行く、と連作にある。

 粉塵の立つ国道の両側に汚れし雪の壁残るなり
           同

 雪深き山里を詠う、「きさらぎ日記」連作七首。短歌人誌上で、ぜひ読んで頂きたい。石川さん夫妻の世界がある。

 日に三度病院給食柔らかな慢性肝炎食全粥三百グラム
           おのでらゆきお

 作者にとって突然の入院だったことが、連作から分かる。体は限界点を超えた。計ってみると、大きな茶碗に一杯ほど。

 忘れたる人の名前を思ひ出す五十音図をくちずさみつつ
           秋田興一郎

 これを言っちゃあおしめえよ、だけれど、作者は明かす。私もやるが、分かるはずだという思いがあるから。

 乳母車押しゆく人は疲れたるブルドッグ抱へ籠に乗せたり
           西台  恵

 籠の付いた乳母車。押して行く方もフルドッグも、老いているのだろう。支え合いながら生きている。

2019/06/29

短歌人同人1 その5 2019/5

 雨。
 世界は真っ白。
 海も陸も空も見えない。
 雨だれの音だけが響く。
 こんな時、もっとも元気なのは紫陽花。
 庭のあちこちに、八箇所ほど植えてある。
 元々の伊豆の原種も。
 長雨で、しょぼくれていても仕方がないと決めたのか、
 「ホーーホケキョ!」
 とウグイスが鳴いている。
 やるね。


 七人の作者の歌、七首を。

 おおかたは「はい」「了解」で済むメール 雨の降る夜は知らんふりして
           今井 千草

 夫婦の間の連絡メールなのだろう。簡潔なだけではなく、時には知らない振りもする。

 湿度をば保つしごとを与へられバイオリン置く部屋に出入りす
           中地 俊夫

 孫の連作なので、孫のバイオリン。成長途上の人間は、大概自分をいっぱしのものだと思い込む。必ずしも悪くはないが。

 金平糖のちひさき角につつかせて舌とあそべりいちまいの舌
           蒔田さくら子

 ホイジンガによれば、人は遊ぶ存在である。こんな小さなところで小さな遊びを堪能する。遊びとは知覚現象と感情の発露でもある。

 花まつりの案内とどけどいかにせむ舅の先祖の墓十あまり
           三井 ゆき

 まさに、いかにせむ。墓は増え、責任子孫は減る。誰にもあることで、思わず自分の身に当て嵌めて考える。

 春ひぐれ「凮月堂」を目じるしに独りし歩くみゆき通りを
           川田由布子

 銀座を歩いた、というそれだけだけれど、店と通りにイメージが立つだけに、十分雰囲気がある。

 家事仕事あるは嬉しく洗濯機を三回まわし満ちくるわたし
           関谷 啓子

 子も居なくなり夫婦だけになると、洗濯も少ない。そこへ三回まわす日が来る。充実する。

 とりあへずけふのビールにたどりつく毎日毎日おなじ顔して
           高田 流子

 とりあへず、に自恃も諦念も焦りも余裕も、全てが入っている。刺激があればいいわけで、今度居酒屋で飲みましょう。