2017/11/26

短歌人同人1 その1 2017/11

 夜が明けて来る。
 風が強い。
 網代沖、湯河原沖に、もう漁船が見える。
 鳶が窓の向こうに舞い上がってくる。
 標高百十メートル。
 早起きは多い。
 

 四人の作者の歌、七首を。

 恐る恐る八歳の悠が理解する癌、死、葬儀、焼かれることを
             猪  幸絵

 夫の親が亡くなる。高齢とも思えない。作者は息子を詠む。恐る恐る理解する、まさに。死のあと、葬儀のあと、それぞれ一拍が約束されている。韻律の妙。

 ブルーベリージャムの入っていた壜を洗って干して今美しい
             同

 当たり前のことだけれど、眼前のきれいに洗った壜を想像して共感する。今美しい、の今、この一語で歌になった。一語の貴重。

 竜胆をたむけて閉ぢる柩かな 泣いてる人が泣きやまなくて
             阿部 久美

 俳句。それも立派な。俳句を短歌に転化するにはなにが要るか。七七を付ければよい。五七五からふわりと広がるものでなければならない。ふわりの代わりにどんな形容詞でもよい。転化が要る。

 天井に下がる旗屋の万国旗運動会の秋が待たれる
             柏木 進二

 旗屋がいい。嘗て地域社会には専門店が多くあった。わたしの生家の斜め前に、竹屋があった。竹の釣り竿を作る。いか屋もあった。凧揚げの凧を作る。皆名人。万国旗は平和の印。

 アパートの一室に似てあたたかい電灯のいろ一か所ともる
             同

 電灯を見てこんな感懐を持つ人は、どんな人かと読者に思わせる。友人になりたいとも、たぶん思わせる。ちょっと天才肌の、まことに謙虚な柏木さん。

 真夜中に見てはいけないジンクスの給水塔をさっき通った
             森澤 真理

 日々切迫した時間、或いは常にぎりぎりの勝負が眼前にある人が、ジンクスを持つ。ジンクスは、特化するほどに呪力を増す。昼はよい。真夜中だけはそれを見てはいけない。結句が効く。

 真理ちゃんと我を呼ぶひとこの世には二十人ほど皆に会いたし
             同

 わたしと妻もその二十人に入っている。人の呼称は面白い。日本人には親近のバリアーがあって、軽々にちゃん付けなどすると、馴れ馴れしいと嫌がられることもある。アメリカと正反対。

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