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2017/11/28

短歌人同人1 その5 2017/11 #短歌

 曇り。
 見えるのは真鶴半島までで、その向こうの湘南はかすんでいる。
 家の前にある大きなモミジが紅葉している。
 佳境。
 枝振りの上の方、冷気を先に浴びる部分が一斉に真っ赤に。
 

 五人の作者の歌、五首を。

 ぴつたり顔に添ふ耳、左右(さう)に張れる耳、いやおうもなき耳の付き方
           蒔田さくら子

 ぴつたり顔に、が初句。人生の深奥を聞くような心地がする。つまりこれ以上確かなことはない。否も応も無い。翻って言えば、人は多様性を本質としている。現今のちんぴら政治家に聞かせたい。

 「手取川」一升持参の訪問の室井家で呑みしは五合ばかり
           三井 ゆき

 結社誌の一つの良さは、会員の消息が分かる事。三井さんが室井忠雄さん宅を訪れた。三井さんの選んだ酒は手取川。いつか飲んでみたい。酒量もみなそこそこになって来た。

 思い出すようにいまをつぶやく若いひとよ思い出すばかりのいまになるよ
           斉藤 斎藤

 いまをつぶやく、で一旦切る。三十代四十代が、五十代六十代が、七十代八十代が、それぞれ「若い人よ」と呼びかける。対象がそうとう違ってくる。作者はそう呼びかける年齢になった。

 もう死んでもいいと思つたことがある一度ではない ここまで来たり
           宇田川寛之

 歓喜か絶望か。言葉からは両方があり得る。上の句からは、遣り尽した感が感じ取れる。一度ではない、からは、踏ん張ったとも取れる。作者は兎に角ここまで来た。

 山頂の風が奪りたるわが帽子崖つ縁の石の上に着地す
           本多  稜

 作者は夏の大雪山旭岳に登っている。登山家である。大切な帽子を失いかけたけれど、幸運にも崖っぷちに留まってくれた。素晴らしい雄大な景が、歌のなかに見える。

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