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2017/11/30

短歌人同人1 その7 2017/11 #短歌

 曇り。
 海も空も白い。
 水平線は空に溶けている。
 今日は農協の野菜納品日。
 スケボーの帰りに、農協へ寄る。
 この時季は野菜が多い。
 壬生菜、白菜、大根、青梗菜、蕪を買う。
 みな地元産。
 「これなんでしょう。堅いでしょうか。」
 と、壬生菜を指差して、おばあさんが訊く。
 「水菜よりは堅いです。鍋にいいですよ。」
 と、わたし。
 おばあさんは、試してみようと言って買う。


 五人の作者の歌、六首を。

 一昨日(をとつひ)まで世話になりしが扇風機何でそこに居たんだよつて感じ
           大橋 弘志

 人は薄情である。必死で働き続けた扇風機に辛く当たる。『幸福な王子』の王子やツバメの有難みは知られない。作者の軽妙な語り口に納得する。

 枇杷剥けばよろこび食みしと晩年の夫をしるす武田百合子は
           佐々木通代

 『富士日記』である。武田泰淳の晩年から死に至るまでを描いた日記文学。とてもシンプルで、泰淳と百合子の生活が生き生きと描かれている。素晴らしい作品。

 イチローの満面の笑みを映したりダグアウトの手摺りの上に
           秋田興一郎

 イチローは滅多に笑わない。実際はどうか分からないがそんなイメージを持つ。大記録を打ち立て、納得のいくときだけ笑む。この歌は、そんな場面をビデオそのもののように描いている。

 オートバックスの脇の小道を入つたら私の好きな海が見えるよ
           金沢 早苗

 まったく変哲のない、普段通りの言葉にみえる。しかし、何度も読んでいると、段々愛らしさが増してくる。普通でいいんだよ、という大きな赦しが、歌から立ち上がってくる。

 降下作戦最終確認さながらに葬式の手順を気合いれて聞く
           西橋 美保

 立て続けに複数の葬式の仕切りを任された作者。パラシュート部隊の輸送機の中での最終確認に擬している。現場は緊張感がある。

 御坊(おぼん)様はしんと端座すぜつたいにわらつてはいけない喪主の挨拶
           同

 こんなに上手く、言わなくてもよいことを言われると、きっと喪主も笑う。しかし、本当に悲しい時は、笑いとも涙ともつかない顔に、口調に、人はなる。

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