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2017/12/02

短歌人同人1 その10 2017/11 #短歌

 晴れ。
 視界よし。
 真鶴半島近くにたくさん漁船が見える。
 海を半分に割って航跡を曳きながら、大島航路の水中翼船がゆく。
 師走に入り、冷えてきた。


 五人の作者の歌、九首を。

 「徹子の部屋」に登場をして倍賞千恵子は染み多き手をわれに見せたり
           中地 俊夫

 若い時は純愛、齢を重ねても清廉、あるいはカワイイ。そのイメージの続いている倍賞千恵子が、染みを気にすることなく見せる、と作者は思い感銘を受ける。

 誰も見てゐない時だけ公園の老人用健康器具に近づく
           同

 老人にはならない人、と中地さんの事を思っていたら、いつしか喜寿である。老人用と呼ぶところに、作者の含羞と反発が含まれている。

 慌ただしき立ち居のなかに目を閉ぢてロヒンギャの人をおもふひととき
           小池  光

 寒くてもストーブがある。冷蔵庫には食料がある。蛇口をひねれば水が出る。自分の身の上を思ったとき、国籍さえ認められないロヒンギャの人の映像は、記事は、酷すぎる。

 倍賞千恵子「下町の太陽」ながれたりなみだこぼるるごとくにも思(も)ふ
           同

 下町に生き、喜びと悲しみを「あゝ太陽に 呼びかける」「あゝ太陽に 涙ぐむ」と歌う歌謡曲。作者が高校生のころ映画化もされている。時代は、けなげである。

 無花果の木がありしあとを指さして少しく過去の話をしをり
           斎藤 典子

 自宅の庭か、或いは何処か他の処。物事を省略し、ある事実だけに照明を当てる。これも修辞。読者は、その切れの良い省略を、潔いとも思い、見事とも思う。

 ヒエロニムス・ボスの絵画を見てのちのこころ悪しきに傾きてゆく
           同

 ボスの時代は、日本史で言えば、応仁の乱にはじまる戦国時代に当たる。奇々怪々な絵。理由不詳のモチーフ多々。善悪の破綻かもしれない。作者は、暫しそのエネルギーを受ける。

 蜜壺に血がしたたりて腐乱するまでを火蟻や糞蝿が待つ
           藤原龍一郎

 作者のモチーフである、日本の政治社会状況が描かれる。暗喩が幾重にも敷かれている。まるでボスの絵のようでもある。

 憲法を弄(もてあそ)ぶ痴者、売国奴、腐れマンゴーに糞蝿が寄る
           同

 作者は、斯くまで苛烈な悪口と雑言を浴びせてみせる。先生を持たないと決めた「短歌人」故の、自由で多士済々の気風が光る。

 長くながきエスカレーターに足を置き湯船に浸かるごとく耐えおり
           内山 晶太

 静止しているけれど、動いている。なぞなぞのようだけれど、それがエスカレーター。静止を強いられた時間は、人によっては業苦に近い。例えば、池袋芸術劇場のエスカレーターは長い。

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