2018/03/12

短歌人同人1 その8 2018/2 #短歌

 「不滅の法灯」が灯る国宝根本中堂へ。
 外部は、壮大な足場と壁。
 平成の大修復の真っ只中。
 光の届かない本堂に入ると千二百年がそこにある。
 諸坊を回り、再び車に。

 西塔(さいとう)へ。
 にない堂を経て、釈迦堂まで歩く。
 また車。

 横川(よかわ)へ。
 途中、回峰行の山道と何度も交差する。
 駐車場着。
 中堂から元三大師堂まで歩いて巡る。
 車に戻り、横川の最も東寄りの日蓮宗定光院までゆく。
 中へ入る。
 住職とお話しする。
 修行の日々の様子が、言わずもがなに伝わってくる。
 横川を出て山を下る。

 湖岸の坂本へ。
 ああ下界。


 九人の作者の歌、十首を。

 緞帳の上るがごとく雲晴れて初冠雪の山現れぬ
           長谷川富市

 冬季の越後は、来る日も来る日も曇りか雪である。冬の青空の有難みは、住んだ人間にしか分からない。山に雪が降る。じき、里にも雪が来る。

 吹き溜まる落ち葉の中の一枚でありたしときにからだ寄せ合ひ
           藤本喜久恵

 エロスであって、エロスからは遠い。意識が昇華され、落ち葉をみて肌の触れ合いを希求する。なんの拘束も、欲望のやりとりも無い、落ち葉のたたずまい。

 歩き慣れし道が迷路になることの不思議ではない恐ろしさ
           高田 流子

 連作。行方不明の老人を探す町内放送が流れる。慣れた道が、迷路になり、人は迷う。怖ろしい。

 亡き友のおはこ「悲しき雨音」が聞こえるような冬の夕べだ
           西勝 洋一

 Listen to the rhythm of the falling rain. で始まるザ・カスケーズの全米一位になった曲。わたしの高校の下校時の音楽だった。懐かしくてかなしい、失恋の歌。作者の友のおはこだった。

 スマートフォンのガラス割れたら割れたまま暮らす暮らしに突入します
           斉藤 斎藤

 よくある。娘もしばらく割れたままにしていた。それを、作者はちょっと大げさに言ってみた。気にしなければ、意外としばらくは使えるようだ。

 無くなりし店を数へてこの夕べ精肉店にコロッケを買ふ
           中地 俊夫

 まるで、わたしの居る町のことかと読む。個人商店がどんどん消える。スーパーとコンビニだけになってゆく。わたしもコシバ肉店へコロッケを買いに行ったばかり。

 舎人ライナーの運転席に陣取つて今井さん蜂須賀さん楽しさうなり
           同
 
 東京都交通局が運営する、舎人ライナー。日暮里と見沼代親水公園間を走る。中空を走る無人運転車で、運転席も客席になっている。通勤時以外は、十キロ弱の楽しい旅らしい。

 東雲の冷気がどっと寄せてくる新聞配達のバイクのうしろ
           川田由布子

 冷気が生き物のように、バイクの後ろから迫ってくる。バイクのうしろ、と言われてリアルな迫力が生まれる。

 太つちよのをばさんそのもののメルケルは鋭利なる刃物を隠し持ちをり
           小池  光

 世界の民主主義の砦、メルケル。相手がトランプでもプーチンでも、一歩も引かない。外見はまさに作者の言う通りだけれど、慮って誰も言わない。それを言う。鋭利な、と言わず鋭利なる、と言う。さすが。

 レール眼前にうねりせまり来 舎人ライナー最前列にわれ座しおれば
           今井 千草

 同じ所へ一緒に行けば、歌が木霊する。この今井さんを、中地さんが見ている。いつか、舎人ライナーに乗ってみたい。


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